腕の良い職人がゴツゴツと質の良い製品を作り出すことからスタートし、事業を大きく拡大することなく、ファミリービジネスの色を残しながらブランドを守っていく。これが従来型のブランドビジネスだとすれば、今猛威を振るっているのは、巨大な資本力を武器に実績のあるブランドを買収し、事業を貪欲に拡大するブランドビジネスだ。その代表例が、モI・ヘネシー・ルイ・ヴィトン、略してLVMHグループである。巨大なブランド帝国を率いるのは、「カシミアをまとったオオカミ」とも「高級産業のナポレオン」とも呼ばれるベルナールーアルノーだ。一九八四年に、クリスチャソーディオールを傘下に持つフィナソシェールーアガシュ社の再建からブランドビジネスに手を染めたアルノーは、八九年にグループ名にあるルイーヴィトンとモエ・ヘネシー(高級酒のブランド)の合弁会社LVMHを買収したあと、ケンゾー、フェンディ、ロエベなど超有名かつ高級ブランドを手中におさめ、一大ブランド帝国を作り上げた。ブランドをIから育てるのではなく、すでに名を成したブランドを手中におさめ、管理をするのがLVMHのやり方だ。多数の高級ブランドを傘下に持つブランド帝国はLVMHだけではない。ダッチやサソローラン、サムソナイトなどを擁するPPR(ピノー・プラソタソールドウート)グループや、カルティエ、ピアジェ、モンブラン、ダンヒルといったブランドが属するスイスのリシュモングループもLVMHと並ぶブランド帝国であり、LVMHの成功を受けて、ヨーロッパのブランドを次々と買収している。主だったブランドがすべてブランドグループに属する日も近いIそう予感させるほど買収ラッシュが続いている。売上だけ見ると、PPRはLVMHの二倍もあるが、抱えているブランドの顔ぶれではLVMHのほうが派手で高級感が高い。何より、とんでもなく強いヴィトンを抱えている。LVMHがブランド帝国の代名詞のようにいわれるのはそのためだ。ちなみに、LVMHのアルノーは、ダッチ獲得にご執心だったが、LVMHの傘下に入ることをいやがったダ″チはPPRに助けを求めた。この一件は法廷闘争に持ち込まれ、両グループは激しい火花を散らしている。結局、LVMHはダッチの買収には成功していない。ただ、この一件によって、「何が何でもダッチが欲しい」アルノーの野心が広く知られることになるのである。