ファッション・ヴィクティムはこの流れをすばやく察知して、肩から豪華なフォックスの巻き物を垂らしてみたり、首にお洒落なラビット・スカーフを結んでみたりした。新たなミレニアムの毛皮は、富と特権の象徴には違いなかったものの、もはや金満階級だけのものではなくなっていた。今度はどんな消費者も少しはそれらしい気分に浸れたのである。毛皮は、一〇万ドルのチンチラ・コートから一五ドルのラビット・カフに至るまで、あらゆる価格帯で市場に登場したのだから。なかには、毛皮人気の一時的落ち込みは、毛皮を着るのはいけないことだという意識によるものではなく、単にいっとき毛皮がはやらなくなったというトレンド上の問題だと論ずる者もいた。「毛皮は死んだわけじゃなくて、人気がなかっただけなのよ」。こう語るのは、国際毛皮業界のニュースやトレンドを報じる週刊のニュースレター、『サンディ・パーカー・レポート』の発行者であるサンディ・パーカーだ。ファッション・ショーで八〇年代のリバイバル傾向が最高潮に達した年に毛皮が復活したことは、大いに納得がいく。たとえば、ヴェルサスのショー。ドナテッラ・ヴェルサーチはジゼル・ブンチェンにライクラを使ったターコイズのタイトなドレスを着せ、大きく逆毛を立てた髪と真っ赤な口紅でけばけばしいネオンの時代を彷彿とさせていた。同様に、マックスマーラーはオフィスウェアに八〇年代の雰囲気を出した。ベルトを緩く締めたカーディガンに、がらんとしたモールスキンのパンツ。こうしたレトロな装いに、ファーはまさしくぴったりはまったのだ。