酉の市の立つ日は、神社の境内いっぱいに露店が並んで、縁起物の品々を売り出します。浅草・鷲神社では毎年数百軒も出るそうです。酉の市の主役は「熊手」。地方によっては酉の市を「熊手市」と呼ぶところもあるくらいです。枯れ葉や穀物をかき集める熊手がなぜ名物かというと、「福をかっこむ(かきこむ)」とか「福を酉こむ(とりこむ)」という語呂合わせの縁起物なのです。もともとは江戸時代の酉の市でさまざまな農具のひとつとして売られていましたが、この語呂合わせによって一躍人気商品になりました。毎年、小さいものから大きなものへ買い替えていくと、年々さらなる福をとりこめるといわれています。当時は、農具のほか、とれたばかりの農産物を売る店も多く、「八つ頭」という里芋の一種をゆでたものや、粟で作った「黄金餅」などが人気だったそうです。「八つ頭」は人の頭(リーダー)になれるように、「黄金餅」は黄金(お金)が貯まるようにという願いがこめられていました。酉の市では「安く買うほど縁起がよい」とされていて、買い手は、売り手の言い値ではなく、値段交渉して買い物をするのが習わしです。商談が成立すると、江戸っ子らしく威勢のよい三本締めのかけ声と手拍子が響きます。ちなみに、値引いてもらった分はお祝儀として売り子さんに渡すのが粋な買い方だとか。酉の市は、関東大震災が起こった一九二三年も、戦時中も、終戦の年の一九四五年も、途切れることなく行われてきました。とくに古くから東京に住む人々にとっては、欠かすことのできない晩秋の行事になっています。
[参考情報]
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