指輪を作るポイントは、あらかじめどの指にはめるリングを作るか、決めておくことです。「そんなことは決まっているじゃないの」そうおっしゃる方もいるでしょう。しかし、左手の薬指用に購入した指輪を右手の薬指にしてみたり、左手の中指に移してみたりということを、意外とやってしまっていませんか。気分を変えるために、あるいは飽きてしまったからという理由で別の指にしてみるのでしょうが、感心できることではありません。手が“第二の脳”ならば、指は“第二の顔”といわれるくらい、同じ薬指でも右と左ではプロポーションが違っているのです。指の長さ、膨らみ具合、指先の流れる方向、関節の動きからシワの刻まれ方まで、みな異なった表情をしています。左手の薬指用に作った指輪を右手の薬指につけるのは、靴を右左逆に履くのと同じことなのです。異論のある方はいま左手にしているマリッジ・リングを右手にしてみてください。指に受ける感覚の違いが歴然とするでしょう。「指輪を制作するとき最も注意するべき点は、指輪をはめる指と水掻きになじむようなデザインにすること」と教えてくれたのは、私が日本で最も優れていると思っている、宝飾プロデューサーのY氏でした。指輪は指におさまると考えがちですが、指輪がおさまるのは指と指の間の水掻きの部分です。各指の間の水掻きは一直線ではなく、緩やかなU字を描いています。個人差はあるにせよ、薬指と小指の間の水掻きは、隣の中指と薬指の水掻きの高さより一段低い。中指用に作ったリングを薬指にしたら、小指との間の水掻きと角度が合わないことは一目瞭然。水掻きにおさまるかどうか、それが指になじむかどうかの最大のポイントなのです。